インタビュー

【大正絽漫】 最低限の改修で、 古民家そのものを楽しむ暮らし

店子
大正絽漫 箱田 勝彦様・千鶴様  聞き手:LLPまちかつ 桑平麻由子

大正絽漫は、箱田千鶴さんが営む和雑貨販売と着物の着付けのお店だ。
ご主人の勝彦さんは「箱田商店」として着物地や和柄の生地を使ったエプロンなどの製造卸をしており、その生地の端切れを利用した和の雑貨を千鶴さんが手作りしている。
当初ご夫妻は寺内町にある別の古民家を改修して数年間住み、別棟の店舗を営業していたが、契約満了で明け渡しとなり退去することに。そんな時期に出会ったのが明治時代に建てられた古民家だ。

勝彦さん:以前は自宅と店舗が別棟になっていて何かと不便でしたが、今は店舗と住居が一緒なので快適です。貸していただくにあたり、きしんでいた廊下と雨漏りのあった屋根は大工さんに直してもらいました。水回りに関しては、お風呂は小さかったので入れ替えましたが、台所は寺内町でお世話になっている方々に手伝ってもらって床を張ったり、シンクを追加で入れただけ。寝室にしている2階も畳を入れ替えただけ。基本的には部屋の中はあまりいらっていませんね。
千鶴さん:この家の雰囲気が好きだったので、できるだけそのままで使いたかったんです。

夫妻が寺内町で念願の古民家暮らしを始めて5年。当初箱田さんには心配していたことがあった。

勝彦さん:最初は新しく引っ越してきた私たちを町の人が受け入れてくださるかが一番心配でした。以前はマンション暮らしだったので、あまり近所付き合いもなかったし、どうなるのかなと。

しかし心配は杞憂に終わる。地元のボランティアガイド活動に夫婦揃って参加するなど、積極的に地域に溶け込もうとするご夫妻はご近所とも良好な関係を築いている。

千鶴さん:以前は無かったんですが、ここでは昔ながらのお醤油などの貸し借りがあったり、野菜をいただいてお返ししたりというお付き合いができています。うれしいですね。

高齢の方が多い地域なので、いろいろな相談を受けたりもするそうだ。個人宅と違い、いつも開いているお店には近所の人も訪ねてきやすいのだろう。
土間の反対側には小部屋があって、ここは着付けの部屋だ。以前より成人式などの着付けの仕事も続けてきた千鶴さんは、寺内町に来た観光客の着物の着付けも受け付けている。

千鶴さん:小さな部屋ですが、プライベートなスペースになるので着付けをするのにぴったりなんです。

その他にも離れが数部屋あるが、そこもご主人の仕事部屋や商品の倉庫にするなど活用している。まさに職住一体のいいことづくめである。
しかし一番の喜びは家の広さではなく、癒しだとお二人は言う。

勝彦さん:日本家屋で暮らすと季節の移り変わりがよくわかるんですよ。ここに座って中庭を見ているとしみじみ思うんです。この家に出会って、本当に贅沢な暮らしをさせてもらっているなと。

古民家を探してたどりついた理想の場所。箱田夫妻の笑顔から寺内町暮らしの楽しさが伝わってくる。