インタビュー

【ご婦人乃宿「泊や」】 高いハードルを越え、 古民家を念願の宿に。

店子
ご婦人乃宿「泊や」 店主 泊野千香代様 聞き手:LLPまちかつ 桑平麻由子

富田林寺内町に女性専用のゲストハウス「泊や」をオープンして5年。観光客はもちろん、近隣の大学や施設を訪れる人たちの宿としても利用されている。
宿を始めたきっかけと、ここ寺内町を開業の場所として決めた経緯を聞いた。

泊野さん:事務職だった20代の頃に通っていた英会話教室で、ネイティブの先生から『日本の旅館に泊まりたいけど、高くて泊まれない』と聞いたことが最初のきっかけでした。

元々英語を使った職業につきたいという思いもあり、いつからかゲストハウス開業が目標に。

泊野さん:旅館業なら運営スタイルはある程度自由だし、私の英語力でもいけそうだとも思いました(笑)。

女性起業家セミナー(大阪府主催)の面接時に、最低3年できれば5年間接客業の大変さを経験してから決めるようアドバイスを受け、京都の旅館で3年半仲居の経験を積み、その後ペンションで2年間働きながら調理師免許も取った。

泊野さん:開業するにあたり、ならまち、今井町、明日香村、宇陀と奈良県の古民家をいろいろ探しましたが、広さや費用の面などでなかなか条件に合わなくて。そのうちに、以前ふらっと訪ねたことのある富田林寺内町を思い出して再訪したんです。その時にLLPまちかつの活動を知り開業希望者として登録しましたが、ここが見つかるまで3年くらい待ちました。

客室面積は33平米以上必要で、避難経路の確保等、条件も厳しかったこともあり、寺内町でも物件探しは難航。途中諦めかけてカフェに変更しようと考え、LLPまちかつの担当者に相談したところ、「必ず探すから、もう少し待ってほしい」と言われたという。

泊野さん:そこまで言ってもらえるならと、ねばり強く待ちましたね。

待った甲斐があって登録から3年後に現在の古民家を紹介されたが、そこからがまた大変だった。宿泊業には旅館業法、建築基準法、消防法など、クリアしないといけない法律が多くある。

泊野さん:当時、大阪府での古民家利用の宿泊業開業例が少なく、南大阪での開業は私が初めてだったんです。だからいろいろな許認可を得るのに窓口の人も慎重で、なかなか進まなくて。工事を始めるまで時間がかかりました。

避難経路確保や消火設備の設置など消防法の関係も加わり、開業のハードルは高かった。
建築基準法に関しては改修の面積が100㎡未満のため確認申請が不用であったが、壁を耐震壁にして、費用はすべてで1000万円ちかくに上った。

泊野さん:考えていたよりかかりました。それでも古民家でゲストハウスをやってみたいという思いが強かったので頑張れました。その中で、耐震改修の際の建築士の手配や公的な助成金の紹介など、LLPまちかつのサポートはありがたかったですね。

最終的にはおおさか地域創造ファンド(大阪産業振興機構)の助成を受けることができ、残りは自己資金でまかなった。

泊野さん:いろいろあって苦労した開業でしたが、その間に近所のお店のおかみさんに寺内町で開業している先輩店主さんたちと繋いでいただくなど、地域での人間関係が築けたことは心強かった。この町のゆっくりしたリズムも私に合っているので、ここでオープンできてよかったと思っています。

海外からの宿泊客から聞く寺内町の魅力は「静けさ」「空気がきれい」「日本の暮らしが見れる町」と泊野さん。「寺内町に来て、やっと日本人に会えた」と言われたことも。

泊野さん:安定的な経営にはもっと多くの集客が必要なのでしょうが、この町の良さは静けさと普通の暮らしだから、そこも大事にしたい。

寺内町で初めての宿「泊や」がオープンして5年。格子窓からもれる暖かい灯りは古い町並みの風景に溶け込み、今夜もお客さんの到着を待っている。